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日本のどこでもインターネットを。
Starlinkを使ってみた! in 五島列島

Posted by MONSTER DIVE

みなさんこんにちは。
LIVEプロダクション事業部にてエンジニアを務めています、YOUです。

先日、とある案件で「五島列島から生中継をしたい」というお話がありまして、単身、五島列島へ行ってまいりました。個人的な話をしますと、初めての九州上陸=五島列島という、なかなか貴重な初体験となりました。笑
初九州ということで密かにワクワクしていたのですが、生中継をする場所を聞いてプルプルと震えることに...。

なんと五島列島の中でも山中の椿農園からの中継だそうで。

生中継となればインターネット回線が必須な訳ですが、農園なのでもちろん固定回線は備わっておらず、キャリア回線も危うい状態の模様。

インターネット回線がない場所から遠隔地中継をする場合、通常ですとLIVEプロダクション事業部で所有の「TVU」という、携帯キャリアのSIMを6-8枚束ねて通信を行う特別な機材を使って行うことが多いのですが、今回はキャリア回線も通信がままならないとのことで、TVUの単体運用だけでは厳しい状態でした。

固定回線はない、キャリア回線も危うい...ともなれば、衛星通信しかないでしょう!
ということで、「Starlink」の登場です。

Starlinkとは?

2020年よりアメリカのSpeceX社が提供している衛星通信サービスです。
通常の衛星より低軌道を周回することで、高速・低遅延を実現。
日本では昨年の10月よりサービスが開始されました。
「電源」と「開けた空」さえあればどこでもインターネットを使用することができます。

乃木坂(東京)での速度チェック

五島列島へ向かう前日、Starlinkを受け取り、早速会社で使用方法の確認と接続テストを行いました。
ざっくりした手順は以下の通りです。
※今回はレンタル品を使用しているため、詳細なセットアップ等は記載しません。

  1. 本体を操作・管理する用の専用スマホアプリ(日本語対応されています!)をインストール
  2. 各部品を接続(アンテナ本体、アンテナの脚、ルーター、そして電源コード。)
    有線LANを接続するためのケーブルが別売りであり、それを含めてレンタルできたため、今回はそちらからPCへ接続しました。
  3. スマホをStarlinkのWi-Fiへ接続
  4. 衛星からの通信を掴むために15分ほど待機
  5. 接続完了

大体こんな感じです。

まず大前提として、Starlinkを使用する際は空(北半球にある日本の場合は北側)が開けている場所にアンテナを設置しないといけません。
接続テストはビルが多い中での実施でしたので、屋上付近の比較的空が開けている場所へアンテナを設置しました。
セットアップと設置が完了し電源を入れると、なんとアンテナが自動で動き出すじゃありませんか...!
衛星との通信に最適な方向を探るのだそうです。
宇宙との通信、そして自動で動くアンテナ...なかなかにロマンですね。笑

東京での通信結果は...?

15分ほど待機したのち、Starlinkがオンラインとなりました。
それでは早速、速度チェックをしてみましょう。
結果はいかほどに...。

Starlink 東京での通信結果

下りの速度がめちゃくちゃ速い...!?
何度かスピードテストを走らせましたが、下りに関しては毎回100Mbpsを超えてきました。
pingも45〜60程度で、衛星通信でこの応答速度というのは驚きです。

この回線速度と応答速度が実現できているのは、Starlinkの衛星が高度550kmという低軌道に配置されているからとのことで、通常の静止軌道衛星と比較すると、約65分の1の距離だそうです。
550kmといったら東京都千代田区から岡山県岡山市くらい、または青森県八戸市くらいまでの距離。
地球から宇宙までの距離と考えると、めちゃくちゃ近いですね。

しかし、中継の時に肝心なのは上りなんですよね。
東京での速度チェックでは上り15〜30Mbps程度だったので、「五島列島で上りの速度がこれより遅かったらどうしよう」なんてことを考えながら、次の日の飛行機移動に向けて準備を進めるのでした...。

五島列島へ上陸!

本番前日、総重量75kgの機材とケーブルたち、そしてStarlinkを持って五島列島へ上陸しました。

五島福江空港で制作さんや他のテクニカルの皆さんと合流し、五島列島を感じる間もなくいざ現地へ。

ロケハンの様子をリモートで見させていただいていたのでイメージは掴めていましたが、正真正銘山中の農園でした。
デジタル・デトックスができそうな空間に、なんだか実家(山形の最上郡)を思い出すような、ほっとする雰囲気を感じて、「こういうところからの中継に関われるのは感慨深いなぁ」と勝手にノスタルジックな気持ちになっていました。笑

緊張の瞬間。現地での通信結果は...?

ノスタルジックな気持ちもほんの数秒。
生中継が成り立つかが大きく左右される、ネットワークの状態をチェックします。
現地にはもちろん電源もないので、ポータブル電源を使用して設置を進めます。

Starlink 五島列島から通信する

なんとも異様な光景...。笑
さて、結果はいかほどに。

Starlink 五島列島からの通信結果

東京と変わらない...いや、上りに至っては東京よりも安定して速度も出ている!
この結果を受けて、「空が開けている場所」という条件がいかに重要かを痛感しました。
東京では速度を図るごとにばらつきがありましたが、五島列島の方ではほとんど一定の速度が出る結果に。

ちなみにキャリア回線の方は、ロケハンでわかっていた通り、農園の中では速度は出ず。
Starlinkがなければ、キャリア回線が安定する箇所(農園からおおよそ100m先)までLANケーブルとSDIケーブルを伸ばさないといけないところでした...。

固定回線が引けない環境での安定した上り30Mbpsの有り難さは計り知れません。

その日は現地スタッフで胸を撫で下ろしながら、宿泊施設へ移動。
次の日の本番に備えてゆっくり休みました。

いざ生中継本番

本番当日、朝日が昇るのと同時に現地へ到着。
昨日と同じ場所へStarlinkのアンテナを立て、速度チェックを実施しました。
昨日と変わらない回線状況、天気も清々しいほど晴れ。
東京との接続テストも問題なく、あとは本番まで待つばかりとなりました。

五島列島からの配信に備えるStarlinkの機材

現地スタッフは穏やかに待機しながら、「今日も晴れでよかったですね。天気予報でも晴れですし。」なんて話をしている最中、田舎育ちの自分は肌で嫌な空気を察知しました。

ーーー これ、近いうちに雨が降ってくるな。

突然の雨で車に避難!しかしStarlinkは放置!?

現地は快晴、天気予報も終日晴れのはずが、自分の嫌な予感が的中して突然の雨に襲われました。
設営時にケーブル周りは雨対策のビニールで補強済み、自分が雨を察知していたので農園のすぐ横に車を持ってきていたのと、幸い土砂降りじゃなかったので機材に被害はない状態で避難完了。
車の荷台に機材を設営し直しました。

その間、Starlinkを移動させる余裕はなく野晒しのまま!
...というより、実はあえてそのままの状態にしておりました。

なぜかというと、Starlinkは「あらゆる方向からの水の飛まつを受けても有害な影響を受けない。(防沫形)」
つまりIP54の防塵防水性能を備えているのです。

雨の度合いやザルを土台にしていたことから、水没の心配もなかったのでそのままで大丈夫と判断。
むしろ下手にアンテナを動かして通信状況が変わる方が怖かったので、ルーターのみ移動させました。

通信速度も大きく変わることはなく、再度東京との接続テストを行った時も切れるようなことはありませんでした。
そもそもStarlinkのアンテナは空が開けている屋外での使用が前提ですから、そりゃ雨くらいなんのそのって感じなのでしょう。

本番は無事に終了

突然の雨に見舞われ、本番時も若干降っている状態ではありましたが、中継は成功裏に収めることができました。

撤収する時には雨も止み、よく頑張ってくれたStarlinkを褒めるかのように隅々まで拭いたのを昨日のことのように思い出します。笑

ヒヤヒヤする場面もありましたが、配信機材を置くためのザルをご用意してくださった農園の方、雨が降った時に一緒に対応してくださった、五島列島組スタッフの皆様のご協力もあってのことでした。
現場にいた人が一丸となって達成する仕事からは、多くのものを得られたような気がします。

Starlinkは配信業界に新たな可能性をもたらしてくれる存在

帰りも総重量75kgの機材やケーブル、Starlinkとちょっとのお土産を担いで東京へ戻ってきました。

案件の内容を聞いた当初はどうなることかと思いましたが、Starlinkを使用したおかげで、中継の可能性がグンっと広がったことを感じました。
今までであれば、キャリア回線が強い場所までロケーションを移すか、キャリア回線が強い場所まで長尺のLANケーブルを引くくらいしか対応策がなかったわけですが、Starlinkを使えば、希望のロケーションに基地を構えて中継できる可能性が出てきました。

「インターネット環境が整っていない場所から中継(配信)をしたい」というニーズは意外と多いものです。
そういったご要望がある方がこちらの記事を見ていらっしゃいましたら、ぜひMONSTER DIVEのLIVEプロダクション事業部までご相談ください。
Starlinkなどの機材を始め、今までに培ってきた経験と知識を駆使して、万全な状態で中継・配信をサポートさせていただきます!

最後までお読みいただきありがとうございました。
以上、五島列島担当のYOUでした。笑


おまけ

今回感じたStarlinkの難点がひとつだけ。
大きなキャリーケースを埋めるほどの存在感...。笑

Starlink 機材の大きさ

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