しました。
今思うと長かったような短かったような、どちらかといえばやはり長かったように思える270日弱の日々でした。
簡単に私のプロフィールに触れておきますと、2010年にWeb業界未経験からの転職でMONSTER DIVEにジョインしたので入社14年目になります。
入社以来、Webデザイナー/Webディレクター/プロダクトマネージャーなど肩書を変えながら、MDのものづくりに大人としての人生の何割かを捧げてまいりました。
そんな私が、初めて体験する人生の大イベントのために、およそ9カ月休職することになりました。
転職時にもインターバルなし、入社してからもリフレッシュ休暇以外の長期休暇なしでここまでやってきたので、ここまで長い間「仕事をしない」というのも未知の体験です。
子育て中のモンスター(AI生成)
5月中旬:リモートメインに移行
5~6月:引継ぎ作業
7月~:休職開始
8月吉日:出産
産後1カ月:夫が育休取得、2人体制で育児。一番ヤバい時期
産後2~4カ月:ひたすら赤子と向き合う日々
産後5~7カ月:少し余裕が出てきて自分と向き合う日々
4月:復帰
少しずつ満員電車が辛くなってきた5月頃。
とはいえまだまだ頭は元気なので、上司と相談して、産休までリモートワークメインに切り替えて勤務することにしました。
コロナ最盛期の頃にリモートワークは経験済みですが、当時は何しろ環境を整える間もなく大多数のメンバーが在宅勤務となったので、リモートならではの難しさというのも一通り体験しています。
当時の反省点を踏まえて、オフィスにいるメンバーができる限り「私がオフィスに居ない」ことをネガティブに感じないよう、物理的には離れていても心理的には近くに感じられるように以下を意識しました。
リモートワークがなぜ難しいか?を考えたとき、ひとつキーワードとして「実在感」の有無が挙げられると思っています。
別に日がな一日同僚と喋りながら仕事をしているわけではない(※例外はいる)我々エンジニアでも、「隣や向かいに仲間がいる」という事実から無意識な安心感とほどよい緊張感を得ていて、それが物理オフィスに出社する潜在的なメリットなんですよね。
そして、リモートワークに不足する「実在感」を擬似的に得る方法として、例えばGatherなどのバーチャルオフィスツールがコロナ禍で一気に広まりました。
自キャラクターを他メンバーのキャラに近づけると自動的に双方の音が聞こえるようになったり、逆に集中ブースに入れば一時的に周りの耳目を遮断できたりと、バーチャル空間内でも「実在感」のあるコミュニケーションを取るための工夫が凝らされています。
今回Gatherは本格導入に至らなかったのですが、もっと多くのメンバーが離れて仕事をする際はこういったツールも活きてくるのでしょう。
リモートワークするモンスター(AI生成)
休職するのは9カ月間でも、引継ぎは13年分なのである。
休暇ではなく休職なので、当然自分の仕事はなんであろうとすべて在職者に引き継がないといけません。
自分が携わっている案件をリストアップして、引継ぎの必要性や難易度をざっと整理する、という棚卸し作業にちゃんと工数をかける必要があります。
今まで関わった案件がすべて現在進行形で残っているわけではないとはいえ、13年在籍しているとプロジェクト数もなかなかのもので、棚卸しだけでもそれはもう気の遠くなる作業...と思いきや、意外と時間がかかりませんでした。
というのも、前述の通り自分は社内での担当領域を少しずつ移動させてきた経歴があるため、節目節目で自分の持ち物を整理してチームメンバーに共有する機会があり、自分だけ知っているヘソクリはほぼ無くなっていたのです。机の荷物(物理)を整理する方が大変だった。
もしずっと同じ部署・同じ職域で13年過ごしていたら、きっと棚卸しはもっと大変な仕事になっていたことでしょう。
MDの場合、多くの案件ではプロジェクトメンバーがアクセスする情報はBacklogのWikiメインでまとめています。
複数名で連携して実装したプロジェクトは大体Wikiが残っていますが、制作が自分完結だった場合は大変です。
休職中に何か不具合が発覚したり改修が発生する可能性を考えて、他のメンバーが更新できるようにWikiを作成したり、コードのコメントを整えたりしましたが、思った以上に時間が足りない。
これに関してはもう少し余裕をもって進めたかったという反省はありつつ、幸い休職後に電話が鳴ることはありませんでした。
棚卸しと同じで、普段からの情報整理と共有、これに尽きますね。
さて、休職直前に大きなリリースがあったこともあり、理想通りの優雅な産休インとはならず、結局最後までバタバタしていました。
そしてついに。
唐突にやってきた休職期間。
突然の「無」。
何の義務感も無しにただただ休めるのは人生でこの「出産前の産休」くらいなんじゃないでしょうか。
しかし身体が重いのもあってどうしても能動的な時間の使い方ができず、YouTubeを延々と流しながらダラダラするという贅沢な毎日。
せめて受動的なら頭を使う受動にしようと、知的好奇心が満たされるチャンネルを見るようにはしていたので、かろうじて頭はボケずに済みました。
なお、無理矢理でも体を動かしたほうがいいと周りに言われ、一日一回あてどもなく近所を散歩した結果、体調も崩さなかった代わりに無事膝を痛めました。
子、爆誕。
初産だったためいろいろと新生児のお世話を教わるものの、わけがわからないまま産後5日の入院期間が終わり、まだ寝てばかりでその本性を隠したプチデビルとともに家に帰されてしまいました。
最近のゲームは大抵最初に親切なチュートリアルパートが設けられているのに。
夫が3週間の育休を取得してくれたので、まずは2馬力で育児がスタート。
ここからの3週間は、あまり記憶がないほどのカオスな日々でした。
夜中は寝られず、それどころか想像以上のデシベル数で泣いてくれるので、覚悟はしていたはずなのに何度もパニックになりました。
たいてい真夜中から明け方までが一番酷く、明るくなる頃にやっと寝息を立ててくれて、やっとこちらも気絶したように眠れた、と思いきやまた起こされ。
これはまるで、朝陽が登るまで毎夜死線を潜り抜けなければいけないベルセルクのガッツ一行の旅路みたいだな、と朦朧とする意識の中でよく思っていました。
ただ間違いなく言えることは、二人で戦ったからなんとか乗り越えられました。
子育てに奮闘するモンスター(AI生成)
地獄の日々を乗り越え、いつの間にか子どもは夜まとまって寝てくれるようになりました。
私の苦労話は本筋ではないので、ダイジェストでお届けします。
そうして、ようやく精神的にも肉体的にも時間的にも余裕が出てきたな、というタイミングで、とうとう職場復帰の時期が近づいてきました。
半年ほど家に引きこもって子どもの相手ばかりしていたので、2月ごろの私は「このままで社会復帰できるのか?」という焦燥感に駆られていました。
『マミーブレイン』という単語があります。
医学的用語ではありませんが、産後の母親が子育てに脳のメモリを持っていかれるせいで言葉が出なくなったり物忘れがひどくなったりする現象をそう呼ぶそうです。
このままじゃ仕事に戻れる気がしない、ならばリハビリしよう!と思い立ち、行ったこと。
この休職中の時間を有効活用しなければ、という焦りから、真面目に資格系の勉強など始める。
しかし、予想以上に頭が回らず、捗らな過ぎて断念。
SwitchでリングフィットアドベンチャーやJust Danceを久しぶりに起動してみる。
私がバタバタと動くたびに寝た子は起きるし、起きた子は泣くし、猫は嚙みつくので、捗らな過ぎて断念。
結局ゲームか、と言われそうですが、ただ惰性で消費的にゲームをする気はありませんでした。
このタイミングで「ずっとやりたかったけどできなかったとっておきの積みゲー」を崩すことにしたのです。
久しぶりに「心が震える」体験をして、私は人の心を取り戻すことができました。
最初の2週間は保育園の慣らし保育のため、長時間勤務はできないので、私も「ならし勤務」期間としてリモートワークで復帰しました。
自分でも結構驚いたんですが、9カ月もの間ろくに仕事用PCを開いていなかったのに、意外とコードの内容まで覚えているものですね。
徐々にアクセルを踏んでいくつもりが、結構早い段階でフルスロットル吹かしてました。
3週目から通勤も開始し、早起きして保育園に送ってから電車通勤という新しい日常が始まりました。
兎にも角にも、無事復帰です。
保育園に遅刻しそうになるモンスター(AI生成)
子どものことを抜きにしても、私の人生の中でとても大事な経験でした。
最初に書いたように、前職と現職の間でもまとまった休みはなく、仕事から完全に離れる時間というのが今まで無かった自分。
仕事をしないことによって、逆説的に自分の中にある仕事というものと向き合うことが出来たような気がします。
そして、休職や長期休暇じゃなくても、貴重な休みの時間でいかに上手に頭のリセット・リフレッシュを実行するか、というのはこれから意識的に取り組む必要を感じています。
ひとつ、この新しい生活形態には予想外のプラス要素がありました。
それは、完全な夜型から朝型の生活にシフトしたことで、まだ人の居ないオフィスでの数十分がちょうどよい一日のアイドリングタイムになったこと。
そして、起床してから家を出るまで少し余裕を持って準備するようになり、軒先の植物に毎朝ちゃんと水をあげるようになったので、子どもと一緒にすくすくと育つようになったこと。
私の感性を揺さぶってくれた、産休・育休中におすすめのゲームを3本紹介しておきます。 いずれもインディゲームで、何周もクリアしたり何十時間もエンドコンテンツに費やさなくても楽しめる逸品です。
言わずとしれたインディRPGの金字塔ですが、いつか絶対腰を据えてやろうと決意したまま数年寝かせっぱなしになっていました。
それだけSteamライブラリ内で熟成させたにもかかわらず、期待を超えるゲーム体験でした。
プレイ済みの方ならわかると思いますが、最後のボスを倒した時には思わず「うおぉぉぉ」と淑女ならざる声が出てましたね。
Tobyさんはこれを一人で作ったんですか? 人生最初の長編ゲームで?
日本の個人デベロッパーLizardry氏が手掛けた言語解読アドベンチャーゲーム。
なにも記憶がなく、一つも単語がわからない状態で、知らない女性との7日間の会話を通して隠された二人のストーリーを「翻訳」していきます。
プレイ感は言語学というよりパズルに近く、一つのピースがハマれば一気に正解に雪崩れていく感覚が快感でした。
最後にたどり着いたストーリーも感動的です。
最初に言っておくと、私のオールタイム・ベストのTOP5に入るゲームです。
「突如訪れる星系の終末までの22分間をループする」宇宙探索アドベンチャーなのですが、ゲームデザインがすごい、ストーリーがすごい、謎解きがすごい。
はじめてゲームを起動した時、1時間後、10時間後、100時間後、と何度ループしても、主人公のステータスも装備も何も変わらないんですよ。
何も成長しない代わりに得られるのは、プレイヤーの知識だけ。
プレイヤーの好奇心のみを原動力に、知識のみを経験値にして、ループの謎に迫る主人公。
何度やっても全く同じ状況からはじまる22分間はそれでも怒涛の展開を見せます。
間違いなく人を選ぶゲームですが、人によっては(私のように)一生もののゲーム体験が得られると思います。
一点問題があるとすれば、ものすごく画面酔いするので、3D酔いしやすい方は(私のように)酔い止めを用意してから起動しましょう。